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住宅ローン控除がある間は繰上返済しない方が得?――控除期間中の「最適なお金の置き場所」

この記事の要点

  • 判断は一行で決まる。あなたのローン金利が控除率0.7%より低く、かつ控除を使い切れているなら、控除期間中の繰上返済は急がない方が手元に金が残る。
  • 逆に固定金利1.5%のような「金利 > 控除率」の人は、控除があっても利息負担が勝つ。繰上返済を検討すべき側です。
  • 最大の地雷は、繰上返済しなかった金を生活費に溶かすこと。残した金を確実に取り置けない家庭は、いっそ繰上返済した方が健全。
  • もう一つの落とし穴が「控除を使い切れていない」状態。育休などで納税額が下がった年は、残高を大きく保つ意味が薄れる。
  • 制度の控除率・期間・限度額は入居時期で変わります。本記事は2024〜2025年時点の一般的な内容。最新は公式情報・専門家へ。
比べるのは一つだけ。「繰上返済で減る利息」と「繰上返済で失う控除」、どちらが大きいか。それで答えは出ます。

「控除がある間は繰上返済しない方が得」は半分正しい

この説、ネットでよく見ます。そして半分は当たっています。問題は、残り半分の人が真に受けて損をすること。仕組みを一度だけ自分の言葉に置き換えておけば、もう迷いません。

繰上返済をすると、将来払う利息が減ります。これがメリット。一方の住宅ローン控除は、年末のローン残高に応じた額が、その年の所得税・住民税から引かれる仕組みです。残高が大きいほど控除も大きい

ここで利害がねじれます。繰上返済で残高を削ると、利息は減るが、同時に控除も削れる。戻ってくる控除のほうが、浮く利息より大きいなら、急いで返さない方が手元の現金は多く残る。これが説の中身です。

比べるのは一つだけ。「繰上返済で減る利息」と「繰上返済で失う控除」、どちらが大きいか。それで答えは出ます。
世帯年収別・iDeCo等による年間節税額の目安
年間の節税額(万円)0481216約5.5万円世帯年収〜700万円約8.2万円〜1,000万円約13.5万円〜1,500万円iDeCoの掛金は全額が所得控除。税率が高い高所得世帯ほど戻りが大きい。

※掛金上限・税率・家族構成・他の控除で大きく変動します。実額はシミュレーションでご確認ください。

金利が0.7%を下回るかどうか、それが分水嶺

難しい計算は要りません。判断はこの一行に集約されます。

ローン金利 < 0.7%(控除率)で、控除を使い切れている → 控除期間中は繰上返済を急ぐな

2024〜2025年時点の一般的な制度では、控除率は年末残高の0.7%(入居年・住宅性能・借入限度額で条件は変わります)。近年の変動金利は0.3〜0.7%程度、固定金利は1%台後半〜が語られてきたレンジです。金利は時期と契約で動くので、ここは目安と思ってください。

あなたのローン金利控除率0.7%との関係結論
0.4%(変動)金利 < 控除率急ぐな。金を別の場所に置く方が得
0.7%前後ほぼ拮抗差は誤差。手数料・手間・安心感で決めてよい
1.5%(固定)金利 > 控除率控除があっても利息が勝つ。繰上返済の出番

つまり「控除があるから返さない」が万人の正解ではない。低金利の変動を組んでいる人ほど、この説が効く。固定で金利高めの人は、話が逆になります。自分がどっち側かを、まず確かめてください。

3,000万円・変動0.4%なら、年9万円ローンを残した方が得

数字で見ると腹落ちします。控除額・利息は契約条件や端数処理で変わるので、考え方を掴むための概算として読んでください。

残高3,000万円、変動0.4%、控除率0.7%とします。

  • この残高を1年維持して払う利息は、3,000万円 × 0.4% = 約12万円。
  • 同じ残高で受けられる控除は、3,000万円 × 0.7% = 約21万円(使い切れている前提)。

出ていく利息12万円より、戻る控除21万円のほうが大きい。差し引き年9万円、ローンを残しておく方が現金は多く残る。ここで100万円を繰上返済すると、翌年以降の控除対象残高が減り、その分の控除をみすみす手放します。

では固定1.5%・残高3,000万円なら。利息は約45万円、控除は約21万円。今度は利息が倍以上勝つ。控除があろうと、繰上返済で利息を削る意味がはっきり出てきます。金利水準ひとつでここまで結論がひっくり返る。これだけは頭に入れておいてください。

「控除を使い切れていない」人は、ここで前提が崩れる

上の試算には「控除を使い切れている」という太い前提があります。住宅ローン控除は、あなたが納めた所得税・住民税の範囲内でしか戻りません。残高が大きくても、納税額がそれに届かなければ、控除枠は余る。満額は受け取れません。

控除可能額が21万円でも、その年の所得税と控除可能な住民税の合計がそれを下回れば、戻るのはそこまで。育休で収入が落ちた年は、このズレが特に起きやすい。

  • 使い切れている:本記事の「急ぐな」がそのまま効く。
  • 使い切れていない:残高を大きく保つ旨味が薄れる。繰上返済を別途検討する価値あり。

自分が使い切れているかは、源泉徴収票・確定申告の控え・住宅ローン控除の計算明細で分かります。共働きでペアローンや連帯債務なら、夫婦それぞれの納税額と持分で見る必要があり、片方だけ控除が余っていることも珍しくありません。条件が入り組むなら税理士に当てたほうが早い。

残した金を「どこに置くか」で、得は決まる

ここが一番見落とされます。「繰上返済しない方が得」が成立するのは、返済に回さなかった金を、ちゃんと残して増やせる家庭だけ。浮いた金を生活費に溶かしたら、得どころか、借金を長く抱えただけの負けです。

残した資金の置き場所は、この順番で決めると迷いません。

  1. 生活防衛資金(最優先):生活費の半年〜1年分を、すぐ動かせる預貯金で確保。これがないまま投資や繰上返済を急ぐのは順序が逆。
  2. 数年内に使う金:教育費・車・リフォームなど、出ていく時期が決まっている金は、元本が揺れない形で取り置く。
  3. 当面使わない金:長期で寝かせられるなら、税制優遇のある積立など増やす選択肢へ。ただし投資は価格変動リスクがあり、元本は保証されません。

ローン金利(払うコスト)を上回るリターンを、リスクの範囲内で取れる置き場所があるなら、繰上返済より金を残す合理性が高い。逆に「どうせすぐ使う」性格の金なら、繰上返済で確実に利息を消すほうが、心理的にも家計的にもよほど健全です。得かどうかは数字だけでなく、その家の「金の使い方の癖」でも決まる。そこを正直に見てください。

では、いつ返すのか

「控除期間中は急がない」を裏返すと、返すべき瞬間が見えてきます。この順で考えてください。

  1. 控除終了年を確認する:控除が切れれば「残高を大きく保つ理由」が一つ消える。終了が近づいたら、まとまった繰上返済の好機です。
  2. 教育費のピークと重ねない:大学進学で支出が膨らむ時期に手元資金を返済へ吸わせると、家計が一気に詰まる。資金繰りの谷を避けて組む。
  3. 変動金利の上昇に備える:金利が上がれば「金利 > 控除率」に転じることがある。そうなったら前提が変わるので、もう一度比べ直す。
  4. 手数料と方式を確認する:手数料の有無、そして「期間短縮型」か「返済額軽減型」かで効果が違う。総利息を削りたいなら期間短縮型、毎月を軽くしたいなら軽減型。目的で選ぶ。

最後に一つ。低金利でも「借金を早く消したい」という安心感には、確かな値打ちがあります。数字上わずかに不利でも、夜よく眠れるなら、それも正解。家計の最適解は、損得と気持ちの両方で決めていい。

家計簿と通帳を整える手元
家計簿と通帳を整える手元

今日、手を動かす確認リスト

  • 自分のローン金利は何%か(変動か固定か)。
  • 控除率・残りの控除期間・年末残高はいくらか。
  • 毎年の控除を使い切れているか(源泉徴収票・確定申告の控えで確認)。
  • 繰上返済に回さない金を、確実に残して置く先を決められるか。
  • 控除終了年・教育費のピーク・繰上返済手数料はどうか。

この5つが埋まれば、自分はどっちが得かは、ほぼ自分で出せます。金額が大きい、条件が複雑、というときはファイナンシャル・プランナーや税理士に一度当てておくと安心です。住宅資金の全体像を整理したい方は無料診断も使ってみてください。

本記事の税・控除に関する内容は2024〜2025年時点の一般的なものです。最新は公式情報や専門家にご確認ください。

繰上返済の前に確かめる5つの数字

  • 自分のローン金利が変動か固定か、何%かを確認する
  • 控除率・残りの控除期間・年末残高を書き出す
  • 毎年の控除を使い切れているか源泉徴収票や確定申告の控えで確認する
  • 繰上返済に回さない金を確実に残して置く先を決める
  • 控除終了年と教育費のピーク、繰上返済手数料の有無を確認する
  • ペアローンや連帯債務なら夫婦それぞれの納税額と持分で見る

よくある質問

住宅ローン控除がある間は、本当に繰上返済しない方が得なのですか?

一般に、ローン金利より控除や運用で得られる利回りが高ければ、控除期間中は繰上返済を急がない判断が合理的とされます。ただし金利水準やご家庭の借入条件で結論は変わります。控除と金利の関係はご自身の試算が前提となるため、最新の制度内容は公式情報やFP等の専門家にご確認ください。

控除期間中に手元資金を置くなら、どこが適していますか?

一般に、当面使わない資金は流動性・安全性・期待利回りのバランスで考えるとされます。生活防衛資金は預貯金、余裕資金はNISA等の制度活用が候補に挙がります。最適な配分は資産状況やリスク許容度で異なるため、具体的な判断は専門家へのご相談をおすすめします。

控除が終わったら、すぐ繰上返済すべきですか?

一般論として、控除終了後は金利負担を減らす繰上返済の利点が相対的に高まるとされます。とはいえ教育費や老後資金とのバランスも重要です。返済か運用かは家計全体で判断すべきもので、最新の制度や手数料の有無を含め、専門家への確認をおすすめいたします。

繰上返済には期間短縮型と返済額軽減型がありますが、どちらが得ですか?

一般に、総利息の圧縮を重視するなら期間短縮型、毎月の負担軽減を重視するなら返済額軽減型が向くとされます。控除を受けている間は返済残高が減ると控除額にも影響しうるため、両者の効果は条件次第です。具体的な比較は試算のうえ専門家にご相談ください。

本記事は一般的な情報提供であり、個別の法務・税務・投資・医療上の助言ではありません。税率・控除・限度額・助成などの制度は改正により変わります。最新かつ正確な情報は公式機関の発表や専門家へのご確認をお願いします。

文・編集/世帯白書 編集部 ・ 監修:準備中(公開時に有資格者を明記します)

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