
ペアローンの仮審査に落ちる理由と、落ちた後の次の一手
この記事の要点
- ペアローンは夫婦それぞれが債務者になる2本の契約。仮審査(事前審査)も2本が同時に走り、片方が落ちればその組み方はいったん止まります。
- 仮審査で落ちる典型は6つ。信用情報の記録・転職直後や勤続の短さ・育休中や時短の収入評価・既存の借入やリボ・カードのキャッシング枠・団信の健康告知。ほぼこれで説明がつきます。
- 片方だけ落ちたときの選択肢は3つ。他行にペアローンで出す/単独ローン+収入合算(連帯保証型)に組み替える/連帯債務型に変える。誰が債務者になり、住宅ローン控除と団信が誰に付くかが変わります。
- 落ちた直後に何行も同時に申し込むのは逆効果になり得ます。申込の照会記録は、CIC・JICCで照会日から6か月、全国銀行個人信用情報センターでも金融機関への提供は6か月以内とされています。
- 再申込は「落ちた理由を特定→直す→本命を1〜2行に絞る」の順。準備チェックリストを記事の後半にまとめました。
落ちた理由がわからないまま次の銀行に出すのが、いちばん遠回りです。
仮審査と本審査の違い。ペアローンは2本の審査が同時に走る
住宅ローンの審査は、一般に仮審査(事前審査)と本審査の二段階です。仮審査は、年収・勤務先・勤続年数・借入希望額といった自己申告に近い情報をもとに「貸せそうか」を概算で確認する段階で、多くの場合は数日で結果が出ます。本審査は、源泉徴収票や売買契約書などの書類で申告内容を裏づけ、物件の担保価値もあわせて精査する段階です。仮審査を通っても本審査で結果が変わることはあり得ますし、仮審査で止まれば本審査には進めません。単独ローンの二段階の仕組みそのものは、姉妹記事住宅ローンの事前審査と本審査、落ちる理由と通すための準備に整理してあります。
ペアローンが単独ローンと決定的に違うのは、夫婦がそれぞれ債務者として別々の契約を結ぶ点です。収入を合算して借入額を伸ばせる代わりに、審査も2本が並行して走ります。片方の年収がいくら高くても、もう片方に引っかかりがあればその一本が落ち、組み方全体を設計し直すことになります。金融機関が見ているのは世帯の合計値ではなく、一人ひとりの返済能力と信用です。「二人合わせれば余裕」という感覚と、審査の目線はここでズレます。
だから、ペアローンの仮審査に落ちたときにまずやることは、次の銀行を探すことではありません。どちらの一本が、何の理由で止まったのかを特定することです。落ちた理由は一般に金融機関から開示されませんが、典型パターンは限られています。次の章で並べます。
仮審査で落ちる典型6つ
1. 信用情報に延滞や事故の記録がある
落ちる理由の筆頭は、本人すら忘れている信用情報の記録です。クレジットカード、携帯端末の分割払い、各種ローンの返済遅れは信用情報機関に記録され、CICでは契約期間中および契約終了後5年以内、JICCでも契約継続中および契約終了後5年以内は保有されるとされています(出典:CIC「CICが保有する信用情報」、JICC「登録内容と登録期間」)。「もう昔のこと」と本人が思っていても、審査の目には生きています。とくに見落とされやすいのが携帯端末の代金。通信料に紛れて分割払いになっているのに滞納の自覚がないまま記録だけ残っている、というケースが本当に多い。心当たりがなくても、二人とも自分で開示請求して確認してください。
2. 転職直後で勤続が短い
金融機関は収入が「続くこと」を重視するので、勤続が短いと返済能力を慎重に見ます。年収が上がる転職であっても、直後はその水準が定着すると判断されにくい。キャリアアップ転職が当たり前の世帯ほど、ここが盲点です。転職を控えているなら、ローンを通してから動くのが基本の順番。逆にするなら、申込時点で一定の勤続実績がある状態を作ってから出すことです。
3. 育休中・時短勤務で収入が下がっている
ペアローン最大の難所です。育休中や時短勤務中は、その時点の収入で審査されると借入可能額が大きく縮みます。復職後の見込み収入を織り込む金融機関もあれば、目の前の収入しか見ない金融機関もあり、扱いはくっきり分かれます。育休中に申し込むなら、その金融機関が育休中の収入をどう扱うかを申込前に直接確認する。電話一本で済みます。段取りの詳細は産休・育休中に住宅ローンは組める?収入が下がる時期の進め方にまとめています。
4. 住宅以外の借入・リボ払いが返済負担率を圧迫している
審査では住宅ローン以外の借入もまとめて返済負担として見られます。年収に対する年間返済額の割合を返済負担率(総返済負担率)と呼び、マイカーローン、奨学金の残債、カードローン、リボ払いの残高が全部ここに入ります。参考までに、住宅金融支援機構のフラット35では「すべての借入れ」を合算した総返済負担率が年収400万円未満で30%以下、400万円以上で35%以下という基準を公表しています(出典:住宅金融支援機構【フラット35】ご利用条件)。民間の基準は各行で異なりますが、住宅以外の借入が枠を直接削る構造は同じです。
5. 使っていないカードのキャッシング枠が多い
実際には一円も使っていなくても、複数枚のカードに大きな利用枠やキャッシング枠があると、「その気になればいつでも借りられる状態」として潜在的な負債と見られることがあります。入会キャンペーンやラウンジ目当てでカードが増えている世帯は、申込前に使っていないカードは解約する、キャッシング枠は外す。長年使っているメインカードまで慌てて切る必要はありません。
6. 団信の健康告知で引っかかる
多くの民間住宅ローンは団体信用生命保険(団信)への加入が前提になるため、持病や既往症の告知で引受が難しいと、その一本が組めないことがあります。逃げ道はあります。引受基準を緩和したワイド団信を扱う金融機関を選ぶか、住宅金融支援機構のフラット35を使う道です。フラット35は「健康上の理由その他の事情で団体信用生命保険に加入されない場合も【フラット35】をご利用いただけます」と明記しており、加入する団信によって借入金利が異なります(出典:住宅金融支援機構「新機構団信の加入要件・保障内容」)。詳しくは持病があると団信に入れない?ワイド団信と非加入で借りる代替策へ。

片方だけ落ちたときの3つの選択肢
片方の一本が止まったとき、取れる道は大きく3つです。違いは「誰が債務者になるか」「住宅ローン控除が誰に付くか」「団信が誰に付くか」。ここを取り違えると、通ったあとで控除や保障の設計が狂います。
| 選択肢 | 債務者 | 住宅ローン控除 | 団信 |
|---|---|---|---|
| ① 他行にペアローンで出し直す | 夫婦それぞれ(契約2本) | それぞれが自分の借入分で受けられる | それぞれが自分の借入分に加入 |
| ② 単独ローン+収入合算(連帯保証型) | 1人(相手は連帯保証人) | 主債務者のみ。連帯保証人は対象外 | 主債務者のみ。連帯保証人は対象外 |
| ③ 連帯債務型(フラット35の収入合算など) | 2人とも(契約1本) | 各自の負担割合に応じて按分 | 主債務者、または夫婦で連生団信(デュエット) |
※控除・団信の扱いは金融機関や商品で異なります。②の記載はPayPay銀行「ペアローン・収入合算」の商品説明、③の控除按分は国税庁の質疑応答事例「共有の家屋を連帯債務により取得した場合の借入金の額の計算」、団信は住宅金融支援機構の機構団信の説明にもとづく一般的な整理です。
① 他行にペアローンで出し直す
審査基準は金融機関ごとに違うので、一行で落ちても別の一行で通ることはあります。落ちた理由が「その銀行の見方」に依存するもの(育休中の収入評価、勤続年数の目安、副業収入の算入など)なら、この道が本命です。ただし、理由が信用情報の記録なら、どの銀行も同じ信用情報機関を照会するため、行を変えても結果は変わりにくい。出し直す前に理由の当たりをつけておくのが前提です。
② 単独ローン+収入合算(連帯保証型)に組み替える
通った側を主債務者にして、落ちた側の収入を合算する形です。契約は1本になり、債務者も1人。落ちた側は連帯保証人として加わります。このとき覚えておきたいのは、住宅ローン控除も団信も主債務者にしか付かないこと。たとえばPayPay銀行の商品説明では、収入合算では「主たる借入人のみが住宅ローン控除の対象」で連帯保証人は対象外、団信も「主たる借入人が団信加入の対象」で連帯保証人は対象外と明記されています(出典:PayPay銀行「ペアローン・収入合算」)。二人分の控除を前提にしていた家計は、ここで設計が変わります。連帯保証人にも審査は入るのが一般的なので、落ちた理由が信用情報なら、この形でも通るとは限りません。
③ 連帯債務型に変える
1本の契約に二人が債務者として名を連ねる形です。民間では取り扱いが限られますが、住宅金融支援機構のフラット35の収入合算がこの型で、収入合算者は「連帯債務者になる方」と定められています。合算できるのは合算者の年収の全額までで、合算額が合算者の年収の50%を超える場合は借入期間が短くなる場合があります(出典:住宅金融支援機構【フラット35】収入合算)。住宅ローン控除は、国税庁の質疑応答事例にあるとおり、連帯債務者それぞれの負担割合に応じて各自が受けられます。団信は、フラット35なら連帯債務の夫婦が二人で加入する「デュエット(ペア連生団信)」があり、どちらかに万一のことがあれば持分や返済割合にかかわらず以後の返済が不要になります(出典:住宅金融支援機構「新機構団信の加入要件・保障内容」)。ペアローン・収入合算・連帯債務の使い分けはペアローンのメリット・デメリットと収入合算・連帯債務の違いで詳しく比べています。
落ちた直後にやってはいけないこと
落ちた直後がいちばん判断を誤りやすい。次の3つは避けてください。
- 複数行に同時に申し込む。住宅ローンを申し込むと、金融機関が信用情報機関に照会した記録が残ります。CICの「申込情報」は照会日より6か月間、JICCの「申込情報」も照会日から6か月以内、全国銀行個人信用情報センターの「照会記録情報」も金融機関への提供は6か月以内(本人開示は1年以内)とされています(出典:CIC「CICが保有する信用情報」、JICC「登録内容と登録期間」、全国銀行協会「全国銀行個人信用情報センター センターの概要」)。短期間に何件も出すと、次に照会した銀行にはその記録が見えます。「あちこちに頼らないと資金が回らないのでは」と読まれる材料を、自分で増やすことになります。
- 理由を確かめずに次の銀行に出す。信用情報が原因なら、どの銀行も同じ機関を照会します。行を変えて通る種類の理由か、直さないと通らない種類の理由かを、先に切り分けてください。
- 申込の前後で状況を動かす。新しいカードやローンの申込、転職、高額の分割払い、引き落とし漏れによるうっかり延滞。審査は申込時点の状況を見るため、再申込までの期間に土台を揺らす行動は、そのまま次の審査に響きます。
再申込までの準備チェックリスト
落ちた理由に当たりをつけたら、再申込までに次を潰します。単独で組む場合も、ペアローンで出し直す場合も、やることは同じです。
- 信用情報を二人とも自分で取り寄せる。CIC・JICC・全国銀行個人信用情報センターへの本人開示。延滞の記録、完済したはずの借入が残っていないか、身に覚えのない記録がないか。携帯端末の分割払いも必ず見る。
- 転職の順番を決める。近く転職するなら、ローンを通してから動く。すでに転職済みなら、勤続実績が積み上がるまで待つか、勤続年数の見方が違う金融機関を選ぶ。
- 育休・時短の扱いを申込前に電話で確認する。復職後の見込み収入を評価するか、現在の収入で見るか。時期をずらせるなら復職後に給与明細が数枚たまってから。
- 住宅以外の借入を一枚の紙に書き出す。マイカーローン・奨学金・カードローン・リボ・分割払い・後払い決済。完済できるものは先に消す。
- 使っていないカードを解約し、キャッシング枠を外す。メインカードは残してよい。眠っているものだけ整理する。
- 団信の告知に不安があるなら、ワイド団信かフラット35を候補に入れる。告知は正確に。曖昧に書いて後で告知義務違反になるほうが取り返しがつかない。
- 書類と収入の証跡を役割分担でそろえる。源泉徴収票、確定申告書、在籍確認に関わる書類。業績連動や副業の収入をどこまで安定収入として算入するかは、金融機関に事前確認。誰が・いつまでに・何を出すかを決めて貼っておく。
- 本命を1〜2行に絞ってから出す。比較は仮審査で済ませ、照会記録を増やさない。
ここまで整えたうえで、二人の年収・借入・働き方の組み合わせで実際にいくら借りられそうか、どこに地雷が残っているかは、並べてみないと見えません。無料のペアローン診断で、自分たちの場合の目安をつかんでおくと、再申込の優先順位がはっきりします。
まとめ 落ちた理由を特定してから、次の一手を選ぶ
ペアローンの仮審査に落ちる理由は、信用情報の記録、転職や育休のタイミング、既存の借入、カードの枠、団信の告知。どれも特定でき、多くは直せるものです。2本の審査が同時に走る以上、片方の見落としが世帯全体を止めます。落ちたら慌てて次の銀行に出すのではなく、どちらの一本が何で止まったかを切り分け、他行に出し直すか、単独+収入合算に組み替えるか、連帯債務型に変えるかを、控除と団信が誰に付くかまで含めて選ぶ。その一手間が、二度目の否決を防ぎます。
なお、信用情報の保有期間、返済負担率の基準、育休中の収入の扱い、控除や団信の取り扱いは、本記事の執筆時点で各機関が公表している内容にもとづく一般的な整理です。基準や限度額は金融機関や制度改正で変わります。最終的な可否は金融機関の判断であり、詳しくは公式情報や専門家にご確認のうえ、ご自身の状況に当てはめて判断してください。
再申込の前に二人でつぶす チェックリスト
- 信用情報を二人ともCIC・JICC・全国銀行個人信用情報センターへ開示請求して確認する(携帯端末の分割払いも要チェック)
- どちらの一本が、何の理由で止まったかに当たりをつける(行を変えて通る理由か、直さないと通らない理由か)
- 複数行への同時申込を避け、本命を1〜2行に絞る(申込の照会記録は6か月残る)
- 転職を考えているなら、ローンを通してから動く順番にする
- 育休・時短中に申し込むなら、その金融機関の収入の扱いを事前に電話で確認する
- 住宅以外の借入を一枚の紙に書き出し、完済できるものは先に消す。使っていないカードは解約しキャッシング枠を外す
- 単独+収入合算や連帯債務型に組み替えるなら、住宅ローン控除と団信が誰に付くかを先に確認する
よくある質問
仮審査に落ちたら、本審査も落ちるということですか
同じ金融機関では、仮審査(事前審査)を通らないと本審査に進めないため、その一本は止まります。ただし審査基準は金融機関ごとに異なり、仮審査で見ているのは年収・勤務先・借入希望額などの自己申告ベースの概算です。別の金融機関に出す、組み方を変えるといった次の手はあります。なお、仮審査を通っても本審査で結果が変わることもあるため、仮審査の通過は見通しであって確定ではありません。
片方の信用情報が原因で落ちた場合、どうすればいいですか
まず本人がCIC・JICC・全国銀行個人信用情報センターに開示請求し、何が記録されているかを確認します。延滞などの記録は契約終了後5年以内は残るとされているため(CIC・JICC)、記録が消えるのを待つか、もう一方の単独ローン(必要なら収入合算)に組み替えるかの判断になります。連帯保証人や連帯債務者として加わる場合も審査の対象になるのが一般的なので、組み替えれば必ず通るとは限りません。
育休中でもペアローンの仮審査は通りますか
金融機関によって扱いが分かれます。復職後の見込み収入を評価する金融機関もあれば、育休中の現在の収入で見る金融機関もあります。申し込む前に、その金融機関が育休中の収入をどう扱うかを直接確認するのが近道です。時期をずらせるなら、復職して給与明細が数枚たまってからのほうが見通しは立ちます。
落ちた銀行以外なら通りますか
審査基準は各金融機関で異なるため、一行で落ちても別の一行で通ることはあります。ただし住宅ローンの申込(照会)の記録は信用情報機関に残り、CIC・JICCでは照会日から6か月、全国銀行個人信用情報センターでも金融機関への提供は6か月以内とされています。落ちた直後に何行も同時に出すより、落ちた理由に当たりをつけて本命を1〜2行に絞って出すほうが堅実です。
再申込までどれくらい期間を空ければいいですか
落ちた理由で変わります。申込の照会記録が気になるなら、記録の保有期間である6か月(CIC・JICC)が一つの目安です。延滞などの記録が原因なら、契約終了後5年以内は残るため、消えるのを待つか組み方を変える判断になります。転職直後や勤続の短さが原因なら、勤続実績が積み上がるまで。理由に応じて、待つ期間と直す内容を決めてください。
文・編集/世帯白書 編集部 ・ 監修:準備中(公開時に有資格者を明記します)