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介護・ダブルケア

仕事と介護の両立、介護離職を避けるための制度活用

この記事の要点

  • 介護休業93日は「自分が親を看る時間」ではない。自分が抜けても回る介護の体制を組むための準備期間と考え直すと、使い道がまるで変わる。
  • 介護休業(通算93日・3分割可)、介護休暇(年5日)、残業免除、短時間勤務。これらは単品で使うものではなく、組み合わせて初めて効く。
  • 2025年4月から、介護に直面した社員への個別の制度説明と意向確認が会社の義務になった。黙っていても会社から声がかかる時代に変わった。
  • 反射的な離職だけは止めてほしい。収入・再就職・年金、そして介護の負担そのものまで、辞めた本人に長く跳ね返る。
  • 日数や給付率は改正で動く。最新は勤務先と公式情報で必ず確認を。
介護休業の本当の役割は、あなたが直接看ることではなく、あなたが抜けても回る「体制」を組むことにある。

親の介護は、心の準備ができる前に始まる

救急からの着信。実家に帰ったら、台所が片づけられなくなっていた。きっかけは人それぞれだが、共通しているのは一つ。介護は、こちらの都合を待ってくれない。

仕事は責任が重くなる時期、子どもの受験や反抗期とも重なる。40代・50代で「子育てと親の介護が同時にのしかかるダブルケア」に入る人は多く、これは負荷のかかり方が一番きつい局面だ。

この瞬間、ほぼ全員の頭をよぎる選択肢がある。「仕事を辞めて介護に専念する」。先に結論を言う。その反射的な離職だけは、いったん手を止めてほしい。理由と、辞めずに乗り切るための具体的な手順を、順番に並べる。

介護が始まった最初の1週間でやること
最初の1週間で踏む5つのステップあわてず、上流の窓口から順に。連絡先を押さえる主治医・親族・お金の在り処地域包括に相談高齢者の総合相談窓口へ要介護認定を申請市区町村の窓口で手続きケアマネ/サービス選定ケアプランを一緒に作るお金と仕事の段取り介護休業・費用の見通し

※自治体・容体により手順や窓口名は異なります。まずはお住まいの地域包括支援センターへ。

働きながら介護する人が、いまの標準になった

仕事と介護を両立する人は「ビジネスケアラー」と呼ばれ、国はこの層がこれから大きく増えると見込んでいる。つまりあなたの状況は、特別に運が悪いわけではない。同じ道を、いま大勢が同時に歩いている。

そこに合わせて制度も動いた。2025年4月の育児・介護休業法の改正で、社員が「介護に直面した」と申し出たら、会社はその人に介護休業などの制度を個別に説明し、使う意向があるかを確認することが義務になった。さらに40歳前後など、介護が始まる前の段階での情報提供や相談窓口の整備も会社に求められている。

かつて介護の相談は「言い出しにくいこと」の代表だった。それが、会社の側から声をかけるべきものに変わった。この一歩は、最初の切り出しの重さを確実に軽くしてくれる。

使える制度を、役割で分けて押さえる

介護の制度は一枚岩ではない。場面ごとに別の道具を当てる、という発想が前提になる。代表的な四つを並べる(以下は2024〜2025年時点の一般的な枠組み。日数・給付率・対象は改正で動くため、最新は勤務先と公式情報で確認を)。

制度ざっくりの中身使いどころ
介護休業対象家族1人につき通算93日まで。3回まで分割可。要件を満たせば雇用保険から給付金(賃金の一定割合)が出る場合がある。介護の「体制づくり」のためのまとまった時間
介護休暇対象家族1人につき年5日(2人以上は年10日)まで。1日または時間単位で取得可。通院の付き添い、ケアマネとの面談など、単発の用事
残業・深夜業の制限所定外労働・時間外労働・深夜業を免除/制限してもらう仕組み。日々の働き方を両立できる形に整える
短時間勤務等の措置時短やフレックスなど、会社が用意する両立支援の仕組み。長い目で働き方を調整する

介護休業を「自分が看る93日」と読むと、失敗する

ここが最大の誤読ポイントだ。93日と聞くと「3か月で介護を片づけなければ」と身構える。だが介護は数年に及ぶことが珍しくない。93日で介護そのものが終わるわけがない。終わらせるための日数ではないからだ。

介護休業の本当の役割は、あなたが直接看ることではなく、あなたが抜けても回る「体制」を組むことにある。要介護認定の申請、ケアマネとの契約、訪問介護やデイサービスの手配、施設の下見。この段取りを一気に進めるための準備期間だ。3回に割れるのも同じ理由。退院直後、症状が進んだ節目、施設探しの山場。状況が変わるたびに小分けで使えるよう設計されている。

まず叩くべき窓口は、二つだけ

制度を知ったら、次は誰に言うか。順番はこうだ。

  1. 勤務先(人事・上司)。2025年の改正で、申し出れば会社は制度を説明し意向を確認する義務がある。「落ち着いてから」では遅い。直面した時点で早く伝えるほど、まだ選べる手が多く残っている。上司に言いづらければ人事や相談窓口に直接でいい。
  2. 地域包括支援センター。介護される側(親など)が住む市区町村に必ずある、介護の総合相談窓口だ。要介護認定の申請、ケアマネの紹介、使えるサービスの案内まで、体制づくりの実務はここが起点になる。相談に費用はかからない。親の住所の市区町村名と「地域包括支援センター」で検索すれば、担当のセンターが出てくる。

この二つを早めに押さえるだけで、「何から手をつけていいか分からない」という最初の数日のフリーズが、はっきり短くなる。

資料を前に両立を考える手元
資料を前に両立を考える手元

それでも「辞めたい」が消えないとき

制度を全部使ってもなお限界が来て、離職が頭に居座ることはある。その気持ちは責められるものではない。ただ、判を押す前に、次の四つだけは冷静に見てほしい。

  • 収入。介護は終わりが見えにくく、収入が途切れる期間も読めない。家計は「介護が長引く前提」で組み直しておく。
  • 再就職。一度辞めると、一段落した後に同じ条件で戻れる保証はない。とくに40代・50代の再就職は、本人が思うより時間がかかる。
  • 年金。働く期間が縮めば、将来受け取る年金もその分削れる。介護が終わった後の、自分の老後の話でもある。
  • 介護そのもの。辞めて距離が近づくと、心身の負担が一人に全集中する。会社という逃げ場を失い、共倒れに向かうこともある。

離職は、この局面で一番大きく、一番戻しにくい決断だ。だからこそ順番は決まっている。制度・サービス・きょうだいや配偶者との分担をすべて使い切り、それでも無理だと確認できたとき、最後に検討する。実際には、辞めずに続けられる道がまだ残っているケースの方が多い。

今日、手を動かすこと

不安なときほど、小さく具体的に動くのが効く。今日やるのは二つだけでいい。自分の会社にどんな両立支援制度があるか、就業規則か社内窓口で確認する。そして、親が住む地域の地域包括支援センターの連絡先を調べて、スマホに登録しておく。

住宅やお金の選択肢を含めて世帯全体の備えを点検したい人は、/shindan/も一度のぞいてみてほしい。

この二つを済ませておくだけで、「いざ」の初速がまるで変わる。介護は一人で抱える前提のものではない。会社にも地域にも、使うべき仕組みは先に用意されている。早く知り、組み合わせて使う。それが、仕事も、世帯も、あなた自身も守る一番現実的な備えだ。

本記事は2024〜2025年時点の一般的な制度の説明で、個別の事情への助言に代わるものではありません。日数・給付率・対象などは改正で変わります。最新かつ正確な内容は、勤務先の人事・公式情報・社会保険労務士などの専門家にご確認ください。

介護離職を避けるための初動チェックリスト

  • 反射的に辞めると決めない。制度・サービス・家族の分担を使い切ってから最後に検討する
  • 自分の会社の両立支援制度を、就業規則か社内窓口で確認する
  • 介護に直面したら勤務先(人事・上司)に早めに伝え、制度の説明と意向確認を受ける
  • 親が住む市区町村の地域包括支援センターを調べ、連絡先をスマホに登録する
  • 介護休業93日は「自分が看る時間」ではなく、抜けても回る体制を組む準備期間として使う
  • 介護休業・介護休暇・残業免除・短時間勤務を単品でなく組み合わせて使う

よくある質問

介護休業はどのくらいの期間、取得できますか

一般に、対象家族一人につき通算で一定日数まで、複数回に分けて取得できる仕組みが設けられています。日数や分割回数の上限は法令に基づきますので、最新の条件は勤務先の規定や公式情報、専門家へご確認ください。長期の付きっきり介護より、体制づくりの準備期間として用いる発想が両立には有効とされます。

介護休業中に受け取れる給付はありますか

一般に、雇用保険の被保険者が要件を満たすと、休業期間に応じた給付を受けられる制度があります。給付率や上限額、対象となる休業日数には条件があり、改正もありますので、断定はいたしかねます。最新の支給率や手続きはハローワークや勤務先、社会保険労務士へご確認ください。

短時間勤務やテレワークなど、休まずに両立する方法はありますか

一般に、所定外労働の制限や時間外労働の上限、短時間勤務といった措置を事業主が講じる枠組みが整えられています。介護を理由とした制度は休業以外にも複数あり、組み合わせが鍵です。利用可能な選択肢は勤務先の就業規則や人事部、専門家へご確認ください。

介護離職を避けるために、まず何から始めるべきですか

まずは公的な相談窓口である地域包括支援センターに連絡し、要介護認定の申請やケアマネジャーとの連携から始めるのが一般的です。介護サービスで負担を外部化し、ご自身は調整役に回る設計が両立の要とされます。具体的な進め方は自治体窓口や専門職へご相談ください。

本記事は一般的な情報提供であり、個別の法務・税務・投資・医療上の助言ではありません。税率・控除・限度額・助成などの制度は改正により変わります。最新かつ正確な情報は公式機関の発表や専門家へのご確認をお願いします。

文・編集/世帯白書 編集部 ・ 監修:準備中(公開時に有資格者を明記します)

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